失 楽 園



がちゃり、と大袈裟な程に響く、
鍵を開ける音。
遠い意識でそれを聞いていたが、
すぐに姉さんが
帰って来たのだとわかり、
僕は飛び起きた。

そして次いで廊下に響くのは、
誰かが姉さんを殴る音。


「こんな時間まで何をしていたんだ!!」


父さんだった。

僕は音をたてないように、
そっと部屋を出る。
ぎしぎしと廊下の軋む音を聞きながら、
僕は父さんの怒鳴り声に耳を澄ませた。



その時だけ、
何故か姉さんを助けようだとか、
庇おうだとか思わなかったんだ。

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