失 楽 園



「ケッコン?
 なんでだよ、姉さん……!」

「恭ちゃん……」

「どうしてそんなこと言うんだよ!!」

「恭ちゃん、落ち着いて……」

「うるさい!!」


僕を宥めようと肩に手を
置いてきた母さんを突き飛ばし、
歯をむき出しにして、
僕は姉さんを睨んだ。


「許さない!!
 そんなの絶対嫌だ!
 姉さんは、僕だけのものだ!!」

「恭ちゃん、でも!」

「相手は誰だ!!」


姉さんの胸倉を掴んでいた
父さんの手を振り払い、
代わりに僕が姉さんの胸倉を掴む。

姉さんは明らかに怯えた目で、言った。


「あ……荒瀬、さん……」


信じられなかった。


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