失 楽 園
粉々になった食器を見て、
母さんはヒステリックに
姉さんに当たり散らし、
その破片を素手で拾わせた。
姉さんは泣いていた。
歯を食いしばって。
僕は姉さんの隣りにしゃがみ、
一緒に破片を拾ってあげた。
「……あ…」
姉さんが小さな声を上げる。
見ると、姉さんの指先には、
ぷくりと血の玉が出来ていた。
破片で切ったのだろう。
僕は何も言わず、
姉さんの指を手にとり、口に含んだ。
「恭ちゃん……!?」
姉さんの血は、甘かった。
一通り彼女の指を舐めると、
僕は絆創膏を取りに行こうと、
立ち上がった。
その時、父さんが僕の横を通り過ぎる。