失 楽 園
「父さん?」
不審に思い、
僕は振り返るが、遅かった。
次に聞こえたのは、ぐしゃ、という、
姉さんの顔が潰れる音。
僕は叫んだ。
父さんが、姉さんの顔を、
後ろから踏み付けていたのだ。
「この卑しい売女!!
恭夜にまで、
色目を使いやがって……。
くそがっ!」
じり、と父さんが
姉さんの顔を踏みにじる。
その度に、じゃりじゃりと
ガラスの破片が砕け、
床に真っ赤な血が広がった。
「やめろ!!」
僕は顔面蒼白になり、
父さんを押し退けて
姉さんを引き起こした。
姉さんの左目は真っ赤に染まり、
流血している。
床に接した左腕も、血まみれだった。