失 楽 園
「姉さん、姉さん、姉さん……!」
「恭夜、そんな奴は放っておけ」
父さんはそう吐き捨てて
キッチンを後にした。
僕はその背中を睨み、
姉さんを抱えるようにして立ち上がる。
「病院に行こう、姉さん」
「いい、いいよ。恭ちゃん……」
「いいわけないだろ!!
ほら、早く……」
僕と姉さんはふたりして
バイクに跨がり、
病院までの道程を急いだ。
あの時後ろから聞こえてた、
姉さんのすすり泣く声が忘れられない。
「……いたい、よ…
恭ちゃん……ごめんね…」