失 楽 園
「……姉さん、僕がずっとずっと、
守ってあげるよ……」
そう囁いてそっと、
姉さんの頬にキスを落とした。
姉さんが完全に寝入ったのを確認して、
ぶちまけたカバンの中身を直そうと思い、
立ち上がる。
黒いカバンにコンパクトや手帳、
ボールペンを直していると、
小さく折り畳まれた紙を見つけた。
何気なくその紙を開いていく。
それは戸籍だった。
紙を持つ手が、ぶるぶると震える。
今このタイミングで
出て来る戸籍謄本は、
僕にとって都合の良いモノでしか
有り得ない、という妄想が
広がった。