失 楽 園
そしてみんなが浮かれるクリスマスイヴ。
姉さんの包帯は外れ、
傷も目立たない程度になっていた。
それでもやはり眼帯は外せなかった。
母さんが腕を奮ったクリスマスディナー。
砂のように感じるそれを、
僕はただ咀嚼し、飲み込んだ。
食事中に姉さんと目が合い、
僕はやんわりと微笑む。
すると姉さんは
少し戸惑ったように
視線を揺らし、微笑んだ。
姉さん、もう少しの我慢だよ。
僕が姉さんを、
全ての苦痛から救ってあげる。
「父さん、そろそろワインはどう?」
ごく自然にそう聞いたら、
既にシャンパンでほろ酔い気味の
父さんは上機嫌に答えた。