失 楽 園



「どうぞ、父さん」


テーブルに置かれたワイングラスに、
赤い水を注ぎ込む。


「母さんも」

「ヴィンテージのシャトー・マルゴーか。
 良いモノを開けたな」


父さんはグラスを揺らしながら言った。
僕はにっこりと微笑んで言う。


「さすが父さん。
 この日にぴったりだと思って」

「ああ……ぴったりだ」


そう言って父さんは
一気にワインをあおった。
それに続いて母さんもグラスを傾ける。


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