失 楽 園
「今の自分の状況が、わかる?」
ふたりの目の前に立ち、
両手を広げて僕は問うた。
ふたりは相変わらず呻くだけで、
見苦しく身を捩らせている。
「くく…っ。
なんで自分がこんな目に
遭うのかって顔だね」
そう言いながら
母さんの頬をさすってやれば、
母さんは涙をぼろぼろ零しながら、
何か言いたげに僕を見上げた。
「…ん? なあに?
これ、外してあげようか」
ピッ、と少しだけガムテープを剥す。
母さんは呻いて痛みに顔を歪めた。
それでも首を縦に振る母さん。
僕は微笑みながら勢いよく
ガムテープを引き剥がしてやった。