失 楽 園
┗全てが溢れる日
「ぐああぁぁぁっ!!」
半狂乱の父さんの悲鳴が、
僕の鼓膜を震わせて、
憎しみに満ちた脳内に浸透していく。
カッターナイフを引き抜いてやると、
父さんの血が飛び散った。
父さんは脂汗を額に光らせて、
小鼻をいっぱいに膨らませて
必死に息をしている。
「…痛い? 痛いよね……。
でも、姉さんは、
もっと痛かったんだよ……」
僕は姉さんの側に寄り、
姉さんの肩を抱き寄せた。
「……ほら、姉さん」
小刻みに震える姉さんの頭に
頬をすり寄せ、
僕は姉さんにカッターナイフを握らせた。
姉さんは力なく首を振り、
カッターナイフを僕に押しつけて来る。