失 楽 園
「い、や……出来ない…」
「姉さん」
「出来ないよ、恭ちゃん……!」
頑としてカッターナイフを
手にしない姉さんに、
僕の苛立ちは募るばかりだった。
「姉さん。
あなたは……こいつらのしたことを、
許せるの?」
僕の問いに、姉さんは首を振った。
「許せない……! でもっ」
「なにやってるのよ!!」
姉さんの言葉を遮り、母さんが叫んだ。
姉さんはびくっと身体を揺らし、
恐る恐ると言った風に母さんを見た。
母さんは血をまき散らしながら
ヒステリックに叫ぶ。
「はやく……っはやく助けなさいよ!!」
「母さん……」
「はやく!!」