失 楽 園



母さんの叫びに
引き寄せられるようにして、
姉さんは母さんの手を縛る
縄に手をかけた。
姉さんは唇をかみ締めながら、
縄を解こうと頑張っている。

 全身の血が、カァーッと熱くなった。


「どうしてそんなことするんだよ、
 姉さん!!」


僕がそう叫んでも、
姉さんは縄を解こうとしている。


「姉さん!!」

「……許せないっ!!」


姉さんが叫んだ。


「許せない……このひとたちのこと、
 私は許せない!
 でも、でも、
 恭ちゃんにこんなこと、
 して欲しくない!!」


熱くなった血が、一気に冷えていった。


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