失 楽 園



「この、役立たず!!」


 姉さんの表情が、一変した。

伏せていた顔を僕は上げ、姉さんを見た。
背骨がぞくぞくと震える。
姉さんの瞳は空っぽで、何も写さず、
何の感情もこもっていなかった。


「姉さん……?」


姉さんの瞳から、大粒の涙が溢れた。


「う、ああ……」


ぐちゃぐちゃに泣きながら、
姉さんはカッターナイフを握り直す。
母さんも傲慢な表情を一変させ、
真っ青な顔をして叫んでいる。





「ああぁぁぁ!!」





姉さんの叫び声と同時に、
ぐず、と母さんの頬に
カッターナイフが埋められた。


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