失 楽 園



母さんの断末魔が、
ワインセラーいっぱいに反響して
僕の鼓膜を痛いくらいに震わせる。


「あう、あああ……ああっ!!」


姉さんは何かを悲痛に叫びながら、
涙を流しながら、
母さんをメッタ刺しにした。

ワインの香りなんかとは全然違う、
錆びた鉄の匂いが肺を満たして行く。
それはむせ返るくらいに
どろどろとした臭気だった。


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