失 楽 園
chapter9
綺麗だったなあ、姉さん。
そう言って青年は、物憂げに溜息をつく。
真っ赤な血を、
髪の毛から滴るぐらいに浴びて……
忘れられないよ。
私が顔をしかめたのがわかったのか、
青年はくすくすと笑いながら言った。
ああ、理解しないでいいよ。
僕のこの気持ちは、
姉さんと僕以外
誰にもわからないだろうし。
わからせるつもりも、無い。
雄弁に話す青年の目は冷たく、
野生の獣のような鋭さを持っていた。
私はそれに肌を刺すような恐怖を感じ、
思わず彼から視線を逸らした。