失 楽 園



左の二の腕に走る切り傷を舐めて。


「恭夜……恭夜って呼んで……」


この広くて狭い世界で、
僕と姉さん、

 ふたりきりの夢を見る。


傷まみれの指の、
一本一本までしゃぶりつくして。


「ねえ、姉さん……。
 恭夜だよ、恭、夜……っ」


熱く絡み付く肉壁をかき分け、
高ぶる僕自身を姉さんに埋めていく。





「あっ、あ…きょう、や……きょうや…」





背中に立てられる爪すら、
痛くて、愛おしい。


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