失 楽 園



僕は前もって準備していた
ドライアイスを、
死体を包むようにして被せた。
死体の腐敗を遅くさせるように。

死体を隠そうとか、
燃やそうとかは思わなかった。

遅かれ早かれ、
僕がしたことはきっとすぐに
世間にバレてしまうだろうから。

それでも、僕に残された少ない時間を、
姉さんと少しでも多く過ごす為に。



僕はワインセラーの温度設定を
最低設定温度マイナス15℃まで下げ、
ワインセラーを後にした。

もちろん鍵は、しっかり施錠して。





空はすっかり明るくなっていた。


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