失 楽 園




「恭ちゃん……恭ちゃん」


姉さんは眼帯をしていなかった。

 生々しく残る、傷跡。

その傷を見たら、
もっと痛め付けて殺したら良かったと

 後悔した。


「恭ちゃん……夢じゃ、ないよね…?」

「ゆめ?」


一瞬なんのことだかわからなくなるが、
すぐに姉さんの言葉を理解して僕は頷く。


「夢じゃない。夢じゃないよ、姉さん」


 そっと姉さんを抱き締める。

今はただ、腕の中の温もりが、
死ぬ程愛しかった。


「恭ちゃん……ごめ……い…」


姉さんは何故か泣いていて、
僕はえも言えぬ不安と焦燥に駆られた。



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