臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「相変わらず口が悪いな。まぁ言うと思ってたからショックは無いけどさ」

 ロビーへ向かいながら亜樹に言い返した康平だったが、健太の欠点が出ている事に気付いていた。

 健太は、大事な話をする時や好きなコが近くにいる時は動揺してしまい、極端に口数が減る。

 根っからの明るさで周りを和ませる健太の良さが、全部封印されてしまう。今もその泥沼に堕ちそうな感じである。

 健太自身も、自分を歯痒く感じているのは康平にもよく分かった。


 ロビーに着いて四人がソファーに腰掛けた時、綾香が言った。

「健太君と康平君は、部活が休みだったのかな?」

「え、何で?」康平が訊く。

「だって今日、第二体育館に来なかったよね」

「綾香はバスケ部なんだ」綾香に続いて亜樹が言った。

「第二体育館で練習してる時、気が付かなかった?」

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