臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「先生が恐くて、そんな余裕なんてないよねぇ」

 亜樹に康平が言い返した。

「あのう勝手にフォローしないでくれる? 否定はしないけど……」


 健太は会話に参加しないで黙っていた。

 綾香が話題を変えた。

「こんな事言っちゃっていいのかな? うちの部に、四人の内で誰が一番頭を叩かれたか数えてる人がいるのよ」

「え、マジで? 趣味悪いよな」

「アハハ、でしょ! それで一番叩かれているのはホラ誰だっけ、テストで一番だったコ」

「……白鳥だよ」ようやく健太が口を開いた。

「そう、その白鳥君ね。彼はあまり器用じゃなさそうで、気の毒な位叩かれてたのよね」

「でも、あいつなりに頑張ってるよ」

「そうそう、白鳥は愚痴も言わないしな」

「二人共、カバっている余裕あんのかなぁ? ……この中に二位の人がいるんだけど」

「たぶん俺だな。白鳥と同じ位不器用だからな」

 康平が言うと綾香は否定した。
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