臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 図書館での勉強は思いの外進んでいた。


 健太には気を遣いながら、綾香にはフレンドリーに、そして康平には上から目線で教える亜樹の存在が大きいようだ。


 夕方、図書館の閉館間際、四人はロビーに立っていた。


「どう、亜樹って教え方上手くない? 私、テスト前にはいつも助けられてんのよね」

「確かに上手いかも知れないけど、俺はその度に屈折しそうだよ」

「なんか聞こえるわね」

 苦笑した康平に亜樹はそっけなく言った。


「二人共、俺と康平みたいな幼なじみ?」

「私と亜樹は中学の時からの友達だよ。でも、亜樹が男子と一緒に勉強なんて初めてなんじゃない?」

「あれ、健太君が最初だっけ?」

「私は康平君も含めて言ってるんだけど。……あ、もう閉館ね。今日は楽しかったよ」

「亜樹先生のおかげで勉強も進んだしな」

 健太も帰り際は自然に話が出来ていた。

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