臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平と健太は長い付き合いの中で、口ゲンカこそ三ケタを超えるキャリアだが、殴りあったケンカは一度もない。

 記念すべき(?)初の暴力行為が健太の顔面に飛んでいく。

 健太は力みながらだが、康平の左ジャブをブロックした。


「今度は片桐が打て」

 梅田に言われて、二人は戸惑いながらも前と逆の行為をする。


「それを交互に繰り返す。但し、相手が打ったら三秒以上間を空けてから打て。分かったな?」

「ハイ!」


 四人はそれぞれジャブを打ち、それをブロックする動作を、ぎこちない感じでそれぞれ始めていった。


 梅田から指導の声が飛んだ。

「白鳥、もう少し離れた場所から打て!」

 梅田は竹刀を使って白鳥を後ろに下げさせる。


「片桐、ブロックする時も六対四のバランスを崩すんじゃねぇぞ」

 再び竹刀を使い、引き気味だった健太の腰を前に出させた。

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