臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「高田、ジャブを打ったらすぐに構えを戻せ!」

 ジャブを打った後、康平の拳が下に落ちていた。彼は梅田から胸の高さに竹刀を出され、それにぶつからないように左ジャブを打たされる。


 今まで、ただ似合っているだけであまり使われなかった梅田の竹刀は、この時部員の技術向上の為に機能的な働きをしていた。


 別の分野で活躍する時もあった。

「有馬テメェ、要領よくすんじゃねぇぞ」

 有馬は自分が防御の番の時、白鳥が打つ前からブロックの体勢を作っていた。

 梅田はそれを見逃さず、有馬の頭を竹刀で軽く叩いた。


 この日一年生達は、ジャブだけの形式練習をずっと続けていた。

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