臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 第二体育館での形式練習は、次の日も続けて行われた。


 形式練習の初日こそジャブだけだったが、次の日からは後ろの手で打つストレートが加わった。

 ストレートは後ろの手で打つ分、体の捻りを使い易く、しかも利き腕でのパンチだ。当然ジャブより威力がある。

(顔にもらったら……)

 四人は緊張している。

 だがいざ始めてみると、最初から相手が打ってくるを知っているので、クリーンヒットの場面はなかった。

 しかし、ブロックした時の衝撃が大きいので腰が引けていた。


「お前ら、六対四の重心を崩すな」

 梅田は全員の腰を竹刀で軽く叩いた。

 一年生達は、相手のパンチ以上に梅田が恐いのであろう。全身を力ませながら、無理矢理腰を前に出してブロックした。


「そんなに力んだら、パンチが打てねぇぞ。もっと力を抜け」


 恐怖の中でリラックスするのは本能に逆らうようなもので、なかなか出来る事ではない。梅田に言われた一年生達だったが、ガチガチに力んだ体でブロックをした。


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