臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「リラックスなんだよリラックス!」

 一年生達がブロックする度に、梅田は同じ台詞を繰り返す。


 梅田は気が短い。何度言っても直らない四人に、梅田の顔は真っ赤になり、声のトーンは怒号に変わっていった。


 女子バスケ部の方から、梅田の足許にボールが転がっていった。

 彼は怒りに集中していて、気が付いていない。

 女子バスケ部の一年生達は、梅田が恐くて誰もボールを取りに行こうとしなかった。

「梅田センセ! ボールを取りに行ってもいいですか〜」

 見かねたバスケ部顧問の女の先生が、やんわりと声を掛けた。


「あ、どうぞいいですよ」

 梅田は、真っ赤な顔のまま笑顔で答えていた。

 さすがの梅田も、先生同士だと気を遣うようである。


 一年生の女子バスケ部員は、必要以上にオジギをしてボールを持っていった。

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