臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 第二体育館での出張練習。……これは一年生達にとって、精神的な重圧のある場だ。

 異性への興味が急上昇中の康平達が、多くの女子(バスケ部)の前で名指しで怒られ、そしてミットで叩かれるのだ。

 その恥ずかしさは、当人達にとってどの位であろうか?


 梅田が計画的に仕組んだかは分からないが、一年生達は、自分だけは怒られないようにしようと必死に取り組んだ結果、目に見えて上達しているようである。


 最初の形式練習の時は、魔法のステッキのように縦横無尽に活躍した梅田の竹刀も、夏休み間近になると彼の体を支える位しか役に立っていない。


 梅田が、口を酸っぱくして言っていた六対四(前六後ろ四)のバランスも安定し、四人の一年生にも余裕が生まれ始めていた。

 余裕が生まれると油断してしまうのは、人間の救われ難い性であろう。


 形式練習のインターバル中、康平の視界に内海綾香が目に入った。

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