臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「部活に戻んなくていいの?」康平が訊いた。

「私の部活はこれでおしまい。突き指したからもう帰りなさいって。……康平君は?」

「俺の方ももう帰れってさ。言い方は乱暴だけど……」

「梅ッチ、部活になると鬼だもんね。……あ、そうだ。康平君駅まで歩くんだよね! 私ンチ駅の向こう側だから、途中まで一緒に帰ろうよ?」

「あぁ、……いいよ」

 思わず返事をしてしまった康平だった。



 待ち合わせの校門へほぼ同時に着いた二人は、ゆっくりと駅へ向かう。


「ショックよね。今までずっとバスケやってて突き指なんて無かったのに、……初心者みたい」

「ど、どの位やってんの?」


「そうね、小学校三年から始めているから今年で八年目だよ」

「随分続いてるね」

「やっぱり好きだからね。……私、ここの高校を選んだのは亜樹が入るからなのよ。家から近いのもあったけど、進路を決める理由としては結構いい加減かもね」

「亜樹はバスケを途中で辞めたらしいけど、何でそんなに仲いいの?」

< 120 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop