臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 綾香が続けて話す。

「亜樹って、外見がお高い雰囲気だから結構誤解され易いのよね。中学の時も一人でいる時が多かったの」

 康平は、何て答えればいいか分からず沈黙していた。

「でも高校に入って亜樹は康平君と楽しそうに話してるから、私もホッとしているんだ」

「……楽しそうかは分からないけど、言葉の暴力は振るわれてるよ」

「それは亜樹が心を開いてるからよ。あんなに男の人に話し掛ける彼女は見たことないもの。……そう言えば期末テストはどうだった?」

「亜樹のノートのおかげで少し成績が上がったよ」

「早く亜樹に言った方がいいよ。彼女なりに心配してたから。……表現は屈折してたけどね」

 綾香はそう言ってクスっと笑った。



 翌日、康平は亜樹に期末テストのお礼を言おうとするが、何かキッカケが無いと面と向かってお礼が言えそうにない。

 康平は、以前のように亜樹が勝手に見るのを期待して机の上に成績表を置いてみた。

< 122 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop