臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
絶望的な夏休み
 終業式が終わり、高校生になって初の夏休みを迎えた一年生達。

 康平のクラスでは、半分の者が開放的な顔をしていた。

 残りの半分は中途半端な表情である。それは運動部の連中だ。部活の為に、いつも学校に来なければならないからだ。

 その中に一人、絶望的な顔をしている人間がいた。

 康平である。

 彼は前日、梅田から夏休みの練習予定を聞かされた。

「朝ロードワークをする者もいると思うから、うちの部は毎日午後一時に練習開始だ。但し一年生は、上級生と時間をズラシたいから午後三時に来い! 念の為言っておくが日曜日が休みだ」


 殆どの運動部は夏休みの期間、午前中に練習する。そして部員達は残りの半日で青春を謳歌する。

 永山高校はボクシング部だけが午後からの練習で、しかも一年生は中途半端な午後三時からだ。

 康平達はその時間まで、体力温存の為に羽目を外せそうにない。何とも規則正しい夏休みになりそうだった。


 ボクシング部の午後からの練習時間は、クラスメートと担任も知っていた。

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