臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
康平は頭を掻きながら言った。
「ゴメンな。全然役に立たなくて……」
「そんな事ないよ。君なりに悩んでくれてたしね」
亜樹は嬉しそうだ。
別れ際、康平は亜樹に訊いた。
「夏休みもあの図書館にいんの?」
「まだ決めてないけど」
「……もし図書館で会ったら、勉強教えてくれるかな? ……偶然会った時でいいからさ」
亜樹の口元がほころんだ。
「毎日あそこにいるかは分からないけど、月曜から土曜日の朝から午後三時まではいるかも知れないよ」
康平は午後三時からの部活である。
「あ、アリガトな」
「偶然会った時は教えてあげるよ。……君は私を探さないと思うけど、奥の席に結構座ってるんだ」