臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 康平は頭を掻きながら言った。

「ゴメンな。全然役に立たなくて……」

「そんな事ないよ。君なりに悩んでくれてたしね」

 亜樹は嬉しそうだ。


 別れ際、康平は亜樹に訊いた。

「夏休みもあの図書館にいんの?」

「まだ決めてないけど」

「……もし図書館で会ったら、勉強教えてくれるかな? ……偶然会った時でいいからさ」


 亜樹の口元がほころんだ。

「毎日あそこにいるかは分からないけど、月曜から土曜日の朝から午後三時まではいるかも知れないよ」

 康平は午後三時からの部活である。

「あ、アリガトな」

「偶然会った時は教えてあげるよ。……君は私を探さないと思うけど、奥の席に結構座ってるんだ」

< 127 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop