臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「若いんだから、後悔しないように頑張れよ」

 話す内容はいつも同じだが、必ず話し掛けてくれる山田(元)先生。


 身体の成長と共に照れ臭さも増す康平の年頃だが、同級生がいない場合は時として素直になれる。


 康平は大きな声で挨拶をする。

「おはようございます」


 それが毎日続くと、康平も走るのを辞めにくくなっていた。


 なぜ康平は、朝四時から走るようになったのか?

 話は前日に遡る。いつものように、康平はジョギングの為に朝の五時に起きた。

 五時に起きても準備があるので、走り始めるのは五時二十分頃からだ。

 最近は五キロを走るのが定番になっているが、ゆっくりペースなので家に戻るのが六時頃になる。

 家の近くの公園を横切った時、康平に挨拶する人間がいた。

「康平君おはよう!」

 近所の小学生達である。夏休み恒例のラジオ体操に出ているらしい。
< 129 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop