臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 四ラウンドのシャドーボクシングが終わった時、再び梅田が口を開いた。

「お前らはまだ完全ではないが、六対四のバランスとパンチを打つ軸は少し固まってきた感じだ。……そこで、今日から前の手で打つフックを教える。フックは簡単に言えば横殴りのパンチだ。サウスポー片桐は右フック、他の三人は左フックだ。全員鏡の前に並べ!」


 四人は、全身が映る大きな鏡の前に並んだ。


 梅田が言った。

「そこでストレートを打った時のポーズを作れ」


 サウスポーの健太は左ストレート、康平達は右ストレートを伸ばす。


「お前ら、その体勢のままで腕だけ戻せ」


 四人は上半身を捻った構えになっていた。


 飯島が説明した。

「大雑把だが、これがフックを打つ前の溜めだ」


 梅田は、一年生達の後ろをユックリと歩きながら言った。

「そこから前の手でフックを打つんだが、まだ打つなよ! 手はそのままで、曲がっている前足の膝を少し伸ばしてみろ」

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