臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 康平達は言われた通りに膝を伸ばすと、捻った上半身が元に戻っていく。


 飯島は、真横からしゃがんで四人を見ていた。その飯島が言った。

「フックの溜めを作った時、もっと腰を反って後ろ足を伸ばしてみろ」


 一年生達が指摘された事を意識してもう一度繰り返すと、四人の上半身は更に勢いよくに戻っていった。


 梅田が説明した。

「前の手で打つフック……面倒臭ぇから、今後前の手で打つフックは単にフックと呼ぶからな。うちの学校のフックは、捻りじゃなく前の膝を使って打つ。分かったな」


 その時健太が質問をした。

「先生、捻りで打つ方が強く打てそうな気がするするんですけど……」


 梅田は、怒った様子ではなかったが説明を拒否した。

「今説明すると長くなるから説明は後だ。今は黙って従え」

「……分かりました」健太はしぶしぶ返事をした。

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