臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 飯島を見て頷いた梅田が、一年生達に指示を出した。

「大まかな打ち方はこんな感じだ。後は打たせながら細かい所を教えるから、フックだけのシャドー五ラウンドやれ」


 ブザーが鳴り、シャドーボクシングが始まった。


 しゃがんだ姿勢に疲れたのか、飯島は一年生達の後ろにある椅子へ座り直して話す。

「今はパンチのスピードを意識するな。この時間はとにかく形を意識しろ」


 梅田も、飯島の隣に椅子を持ってきて座った。そして四人に言った。

「ゆっくりでいいから、前足の太ももで持ち上げるような感覚で打つんだ」



 鏡の前でフックを繰り返す一年生達に、二人の先生は名指しでアドバイスをする。

「有馬、拳は縦だぞ。そして下から上に突き上げるように打て」

「高田、打つ時のガードをもっと絞れ。溜めを作った時のバランスは六・四ではなく、前七後ろ三だ」
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