臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「白鳥、お前に左足を曲げるように言ってたのはこのパンチの為だ。もっと意識しろ」

「片桐、溜めを作った時の前足の向きはもっと左側だぞ。お前の悪いクセだった所だ。この機会に直せ」

 二人の先生のアドバイスを受けながら、一年生達はひたすらフックを繰り返していく。


 五ラウンドが過ぎ、サンドバッグ打ちかと思っていた康平達だったが、練習はここで一時中断した。


「さっき片桐がした質問に、今答えるぞ。体の捻りで打つのが悪いとは言わないが、捻りで打つ場合はどうしても足が踏ん張ってしまう。すると動く相手には打ちにくい。その点、今教えた打ち方はすぐに打ち易い。分かったか?」

 梅田の説明に、健太は納得したようである。


「他に質問したい奴は、今の内ドンドン吐き出せよ」

 飯島がそう言うと、康平が質問をした。

「フックを打つ時、ガードを絞ると凄く窮屈なんですが……」

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