臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 この質問に飯島が答えた。

「結論から言うと、窮屈でも我慢しろ。……理由はこうだ。オーソドックス(右構え)同士の戦いの場合に、左フックは相討ちになり易い。口で言ってもイメージが湧かないと思うから、チョット実演する。高田、こっちに来い」

 康平が前に出ると飯島が言った。

「お前、右ストレートをゆっくり打ってみろ」


 康平が言われた通りに、右ストレートを打つ。

 すると飯島は、康平の右側に頭をずらして避けた。


「お前はそこで、左フックをゆっくり返せ」


 康平が左フックを打つと、右ストレートを避けた飯島が同時に左フックを打っていた。

 打ちながら康平は理解したようである。


「これは一つの例だが、他にも相打ちのケースはあるから、打ちにくくても相手のパンチをもらわない為だ。我慢してガードを絞れよ」


 質問は続いた。今度は有馬だ。

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