臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「拳は縦拳ですよね。……捻って横拳にした方が強く打てそうな気がするんですが……」


 梅田が答えた。

「有馬、力コブを作ってみろ」

「あ……はい」

 有馬が力コブを作る。

「これが縦拳でフックを打った時の腕の状態だ。腕はそのままで拳を内側に捻ってみろ。すると力コブはどうなる?」

 有馬は、梅田から言われた通りの動作をして言った。

「力コブがヘコミます」

「それが拳を水平にして捻ってフックを打った時の腕の状態だ。縦拳で打つ方が力は入るんだよ」

「……分かりました」


 納得していないような表情の有馬に、梅田は怒らずに言った。

「他にも力が逃げない理由はあるんだが、それは打っていくうちに分かる事だ。次はサンドバッグ打ちだ。さっさとグローブを付けろ!」


 練習場の中には四つのサンドバッグがあり、グローブを嵌めた一年生達はそれぞれ打つ体勢になった。

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