臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 ブザーが鳴る前、梅田が言った。

「最初のラウンドは触る感じでいいから、前の膝を使って打つ意識を持て」


 一年生達は、フォームをチェックしながら軽く打った。


 次のラウンドが始まる前、再び梅田が口を開く。

「このラウンドからは思い切り打つんだ。但し、二つの点に注意しろ。まず顎を引いて顔は真っ直ぐだ。そしてガードは絞れ」


 ラウンド開始のブザーが鳴り、康平達はサンドバッグにフックを叩き込む。


 梅田が怒鳴った。

「お前ら、力んでもいいから強く打て」


 飯島が挑発する。

「オメェラのパンチはそんなもんかぁ!」

 このラウンド、二人の先生は色々な事を言ってけしかけた。


 ラウンド終了のブザーが鳴り、インターバル中飯島が言った。

「前の手で打つフックは、プロのノックアウトパンチの中でも七割位の確率なんだぞ」

< 141 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop