臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

 こうして練習は進んでいったが、筋トレの時に新たなメニューが追加された。

 首の補強である。一年生達はまだ慣れないので、簡単な補強から始まった。

 仰向けに寝た姿勢で、頭を起こしながら動かすという簡単なものだったが、康平達は繰り返してるうちに辛い表情になっていった。


 この日、全ての練習が終わった後に白鳥が質問した。

「せ、先生、う、うちの学校のフックは他の学校のフックと違って下から上に突き上げる軌道なんですが、それはなぜですか?」

 無口な白鳥が質問する様子を、康平と健太、そして有馬は黙って見ていた。


 梅田が答えた。

「今日教えたフックは、体のどこを使って打つのか言ってみろ」

「……前足の太ももです」

「その通りだが、太ももでパンチを持ち上げた時の、体全体のパワーはどう働いている?」

「下から上です……!」

「分かったようだな。アッパー気味に打つパンチの軌道は、体全体が生み出す力を効率よく利用する為だ」
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