臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)

「……あのさぁ」

「ん?」

「まだ誰にも言ってないんだけどな。亜樹には期末テストでも世話になったし、本当の事を言うよ」

 康平は、ジョギングに至る経緯を亜樹に全部話した。


「なるほどね。健太君達も走ってるのかな?」

「……たぶん走ってると思う」

「たぶんて、友達同士の会話が少ないじゃないの?」

「いや、それはないよ。ただ走る事については、みんな何も話さないかもな」康平は即座に否定した。

「梅田先生が誰にも言うなって言ったから?」

「……うまく言えないけど、その後のセリフが気になってると思う」

「何て言ってたの?」

「自分のやった事を話す奴で、強い奴はいないって事だったな」


 亜樹が笑った。

「私に言っちゃって大丈夫? 話を聞かなかった事にしてあげるよ」
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