臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「いいよ。……梅ッチも一人位ならいいって言ってたし」

「私も梅田先生の考え方は賛成だな! 口先だけの男は虫酸が走るもんね」

「何となく分かるよ」今度は康平が笑って言った。

「それどういう意味? ……まぁいいわ。話は変わるけど、今日も康平は朝五時に起きたの?」

「いや……四時だよ」

「夏休みなのに何でそんなに早く起きてんの?」


 康平は、朝のラジオ体操に来る小学生達の事を話した。

 亜樹は少し吹き出した後、心配するフリをした。

「大丈夫? 小学生より弱いのにボクシングなんてやっていけるの?」

「余計なお世話だよ! 町内会のガキって、父兄に筒抜けだから恐ろしいんだよ」

「アハハ、それは言えてるかも。……でもそんな生活だったら、また君にすっぽかされそうだしなぁ」


 少し考えていた亜樹が再び口を開いた。

「私、最近携帯持ち始めたのよね。来れなくなった時、ここに連絡頂戴。光栄に思いなさいよ。まだ綾香にも教えてないんだからね」

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