臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 並んだ一年生達に梅田が指示を出す。

「フックの溜めを作ってみろ」


 二日間重点的にフックを練習したせいか、四人はスムーズに形を作った。梅田は話を続けた。

「ボディーブローとアッパーも、前の膝を使うのはフックと同じだ。まずボディーブローだが、パンチを打つ方の肘を前に突き出すように打つ。その時は、パンチを打つの方の腰骨を少し前にスライドさせろ」


 一年生達は言葉だけで出来る筈もなく、ボディーブローの素振りを五ラウンドやって、何とかコツだけは掴んだ。


 インターバル中、梅田が言った。

「次にアッパーだが、ナックルを返しながらパンチを打つ方の肘を、ヘソの辺りに横滑りさせるように打ってみろ」


 ナックルを返すとは、拳を捻って手の甲を相手に向ける事である。


 全員ボディーブローの時より覚え易かったようで、三ラウンドの素振りでコツを掴んだ。

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