臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「そうだ。石山は左ボディーブローが得意なんだが、たまに左アッパーへ切り替えるんだよ。相手はボディーを打たれたくないから、こうブロックするだろ」

 飯島はそう言って、右肘を右の脇腹辺りに付けてガードするポーズをした。

「ボディーを守ろうとしてガードが開いた時に、石山の左アッパーが内側から当たるんだよ。同じ体勢から打つから相手には分かりにくい。思わぬところから食らうパンチは効くからな」

 練習が終わって着替えた四人だったが、鏡の前で同じ体勢を意識し、ボディーブローとアッパーを打ちを始めた。


 飯島が慌てて言った。

「お、お前ら今やんなくてもいいだろ。……俺はお前らが帰らないと、鍵を閉めて帰れないんだよ」

 康平達は、飯島に追い出されるような格好で練習場を出ていった。
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