臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 健太が笑って言った。

「康平は、噂とか流行りには昔っから鈍感だったからな」

「亜樹とは、その……何だろ」


「別に答えなくてイイって! 山口は美人だけど、俺のタイプじゃねぇしな。……それに、俺は二番よりも上の一番から教わってるからよ。テスト前だけだけどな」

「よ、よせよ」

 白鳥が有馬に言った。学年一番は白鳥である。

「別にいいじゃねぇか。俺は中間テストん時、赤点とらなきゃイイって勉強しなかったんだけど、そしたら点数がマジヤバくてな。期末ん時、白鳥から教えて貰ったたんだよな。まぁ、おかげで追試は免れたってわけさ。教える奴が男ってのは残念だけどな」

 有馬は更に話を続けた。

「お前ら明日予定がねえんだったら、うちの方へ遊び来いよ。……オンボロなゲーセンがあってさ、ゲームも古いけど十円や三十円で遊べるんだぜ」


 健太が食い付いた。

「安いな。古いのって、最近あまり見ないからな。康平も行くだろ?」

「行くけど、白鳥は?」

「ん……ちょっと……」

 もじもじする白鳥の代わりに有馬が言った。

「俺がさっき白鳥に聞いたら用事があるってさ。……白鳥、お前そろそろモジモジ君は卒業した方がいいぞ」

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