臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
家に着いた康平は、メモ用紙を取り出した。亜樹の携帯電話の番号が書いてある用紙だ。
明日図書館に行く約束はしてない。彼は連絡した方がいいのか散々迷ったが、思い切って電話をすることにした。
直接話すのと違って電話だと緊張する人間がいる。康平もその一人だった。
メモを見ながら電話を掛けた。
【はい!】
康平は緊張のあまり、思わずいつもの電話の台詞を言ってしまった。
【山口さんのお宅でしょうか?】
亜樹が電話越しに吹き出した。
【ぷっ。もしかして康平? 携帯にお宅でしょうかは無いんじゃないの】
【携帯に電話すんの慣れてないんだよ。明日、用事が……いや、ボクシング部の奴らと遊びに行くからさ。図書館は行かないって一応連絡しといた方がいいと思ってさ】
【アハハ、わざわざ理由を言わなくてもいいよ。私も、夏休みの日曜日は勉強休む事にしてるのよね。それに明日は図書館休みだよ】