臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
「安いな」

 健太が言うと有馬が説明した。

「インスタントラーメンを作っただけなんだけどな。ただ、今日は日曜日だから十二時二十分過ぎには注文するなよ」

「なんで?」

 康平が有馬に訊くと、その時間からテレビの歌番組が始まるので、その時に注文するとオーナーの機嫌が悪くなるようである。

 また、平日の十二時四十五分からは注文出来ないらしい。


 有馬がその時間に注文した時、テレビで見逃せないシーンだったらしく、オーナーから台所に呼ばれて自分でラーメンを作らされたという話だ。

 昼時に注文できないランチメニュー……。何ともフザケタ感じだが、オーナーは年金で暮らせる年配の人で、ゲームセンターは趣味でやってるようだ。


 オーナーらしき年配の女性が店に入った。白髪にピンクの派手な眼鏡を掛けていた。

「おや、お前にしてはマトモな連れだねぇ」

 オーナーに言われて有馬が答えた。

「何言ってんだよ。俺の連れはみんなマトモだぜ」
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