臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
有馬の後を康平達はついていった。
歩きながら健太が言った。
「有馬、どんな用事なのか少しでもいいから教えてくんねぇか?」
「まぁ、深刻な事じゃねぇのは確かだよ。行きゃ分かるからさ」
二人は有馬に言われるまま、しばらく複雑な道を歩いたが、有馬の足がようやく止まった。どうやら目的地に着いたようだ。
「ここで昼メシ買おうぜ」
有馬が指差した先は、『スーパーまるちゃん』と大きな看板のあるスーパーだった。
そこへ入っていく有馬にそのままついてゆく二人だったが、惣菜コーナーから聞き覚えのある声が聞こえていた。
「今日は揚げたてのクリームコロッケですよー! お昼がまだだったら、今お買い得ですよー!」
白鳥の声だった。
彼は高いテンションで、もともと赤い顔を更に真っ赤に染めながら、学校でも聞いた事のない大声を出していた。
康平が小声で有馬に訊いた。
「あいつ、バイトでもしてんの?」