臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 叔父さんの話は更に続いた。

「有馬君は翔から聞いているみたいだし、片桐君と高田君も翔が信用してるみたいだから教えるが、翔は小さい頃お父さんを亡くしているんだ。その上、お母さんは体が弱い。それで経済的に苦しくてな、三年位前までは本当に大変そうだった。……俺は婿養子だから、あの家族に何もしてやれなくて俺も辛かったんだがな。ただ翔には二人の兄貴がいて、中卒だが働き始めたら少しは楽になったようだ。……二人の兄さんは、翔だけでも高校に行かせたいって、頑張って働いてお金を貯めていたんだよ」


 康平と健太は返す言葉が見つからず、黙って聞いていた。


「それに、翔には学校の先生になりたいっていう気持ちがあってね。それには大学を卒業しなければならないから、翔も諦めていたんだが、翔の中学の担任……確か加納先生と言ったな。その加納先生の薦めで、永山高校に入学したんだ」


 健太が叔父さんに訊いた。

「白鳥は他の県から来ましたよね。地元の高校だと、何か不都合でもあったんですか?」

「翔の地元だと進学校は、近くにもあったが私立だったんだ。少し離れた所にも公立の進学校はあったが、ここにはいつも全国レベルが出てる強いボクシング部がある」

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