臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 今度は康平が訊いた。

「ボクシング部って、何か大学と関係あるんですか?」

「ハハハ。君は何にも知らないんだな。ボクシングの全国大会でいい成績を残すと、大学推薦の道があるんだよ。それもいい条件でな。去年の夏に翔の二人の兄貴と加納先生が、翔が永山高校に入ったら、ここに下宿させて下さいってワザワザお願いしにきて今の話を教えてくれたんだよ。……もっとも俺も知ったのはその時だから、偉そうな事は言えないけどな」

「けどボクシングの推薦じゃなくてもいいような気がするんですが……。あいつは頭もいいですから」

 健太の質問に叔父さんは答えた。

「それは翔の希望だよ。ああ見えて、翔はボクシングが大好きみたいだ。理由は知らないがな」


「俺はてっきり、イジメか何かで隣の県から来たと思ってたんですよ」

 康平の話に有馬が笑った。

「アハハ、俺も最初は思ったけど、アイツ金がネェからカツアゲされる心配もねぇしな」


「そう言えば、有馬君と翔が店で話しているのを見たうちの店員が、『翔君が、目付きの悪いコに絡まれてる』って、血相変えて報告しにきた時は、俺もビックリして駆け付けたんだよ」

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