臆病者達のボクシング奮闘記(第一話)
 二人と別れた康平と健太は、複雑な気持ちになっていた。

 康平と健太が、同時に好きになった女の子は鳴海那奈だった。そして彼女と付き合っているのは坂田裕也である。しかも裕也は康平達と結構仲がいい。

 あの二人は康平達が那奈を好きだった事は知らない。

 康平と健太は二人が憎い訳ではないが、なぜか切ない気持ちになった。

 古本屋には入らずに健太が言った。

「なんでお前、自分もボクシングやってるって言わなかったんだよ?」

 健太の口調が八つ当たりのように感じたので、康平もたまらず言い返した。

「お前だってはぐらかしてたじゃないか」

「空気読めよ。あそこで俺達もボクシングやってるって言える訳ねぇだろ」

 不毛な口ゲンカが続いた後、健太がボソっと言った。

「まだ構えと筋トレしかやってねぇし……部活辞めようかな」

 康平は、何て答えていいか分からずに黙っていた。

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